第50章

彼女が自分の手で設計図を引いている動画を目にして、教授はようやく胸を撫で下ろした。

怪我はきちんと治して。ほかのことは、治ってからでいい。

二ノ宮原子が抱えていた案件も、その流れで一旦ストップになった。結果、彼女はいま驚くほど暇を持て余している。

「薄原川人」

二ノ宮原子が呼びかけた瞬間、薄原川人はノートパソコンを閉じ、口元をゆるく吊り上げた。

「医者に聞いた。今日はもう、だいたい大丈夫だって。――付き合え。行きたい場所がある」

その笑みは、どこか背筋が冷える。二ノ宮原子は反射的に身構えた。

「どこへ」

「行けば分かる」

車が精神病院の正門前で止まった途端、記憶が濁流みたい...

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