第58章

薄原川人が浴室の外まで来た。

ガラス越しに見える長身の影は、ぼんやりと滲んでやけに圧がある。

二ノ宮原子の胸に、理由のわからない恐怖がひたりと張りついた。

薄原川人は穏やかな調子で、こんこんと扉を叩く。

「二ノ宮原子。開けろ」

原子は隅に縮こまり、ドアノブを警戒するように見つめた。

馬鹿じゃない。こんな状況で開けるわけがない。

叩く音が次第に強くなる。けれど、こちらは動かない。

薄原川人はルームサービスを呼び、大崎に鍵を持って来させた。

がちゃ、がちゃ……短い操作音ののち、浴室の扉が開く。

薄原川人の体躯が浴室に現れた瞬間、空間の大半が塞がれたように感じた。

まだ十分に...

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