第70章

廃工場の中。

二ノ宮原子はときおり顔を上げ、誘拐犯たちの動きを観察しながら、背中側で必死に手首を捻って縄をほどこうとしていた。

そのとき、扉が乱暴に開く。

二ノ宮薫子が突き飛ばされ、床に転がった。

『言っとくけど、あたしは二ノ宮財団の後継者よ! あたしに傷ひとつ付けたら、パパとママが黙ってないんだから!』

誘拐犯の一人が、靴底を持ち上げる。

二ノ宮薫子は甲高く悲鳴を上げた。だが――足は宙で止まったままだった。

『ハハハ。薄原川人の女も大したことねえな。結局、俺の足元だろ?』

二ノ宮薫子は呆然とした。

こいつは――自分が薄原川人の女だから、こんなことを?

『ち、違う! あん...

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