第72章

『秘密?』

薄原川人は鼻で笑い、二ノ宮原子の喉元を締めていた手をすっと離した。

『いらない』

なぜだか胸の奥が、ほんのわずかに空いた気がした。

同時に、原子とこれ以上言葉を交わす気も失せる。

薄原川人は彼女を上から下まで品定めするように眺め――言い捨てた。

『洗ってこい』

二ノ宮原子は、物みたいに見られるのが好きじゃない。

けれど今の自分に、薄原川人へ逆らう力なんてない。

……それどころか、頼らなければならない。

『分かった』

原子は大きく息を吸い、使用人に案内されて洗面室へ向かった。

洗面室は、目眩がするほど広い。ここならバスケだってできるんじゃないか――そんな馬鹿...

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