第73章

『お兄さん、ママに頼まれて様子を見に来たの』

空気が、すとんと落ちたみたいに静まり返った。二ノ宮原子は息をすることすら忘れる。

薄原川人は目を細めたまま、薄原弓子に視線すらくれない。

『誰がお前の「お兄さん」だ。馴れ馴れしく呼ぶな』

薄原弓子の目に、みるみる涙が溜まる。

『でも、わたしたち……ほんとは――』

『それ以上言うな。俺が吐き気する。今すぐ外に放り出されても文句言うな』

その一言で、薄原弓子は完全に崩れた。ぱっと涙を散らし、顔を覆って駆け出していく。

薄原川人が二ノ宮原子の顎を持ち上げた。

『……どうした。言い方がきついと思ったか?』

二ノ宮原子は眉を上げる。

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