第74章

薄原佑哉は愕然とし、瞳の奥に沈んだ陰を押し殺した。

薄原川人は二ノ宮原子の手を引き、耳元へ低く囁く。

『家に連れて帰る。こんなところにいたら、吸う空気まで誰かに汚される』

その言葉に薄原建人はその場で咳き込み、怒りで顔を歪めたが、二人の背中はもう遠かった。

父子は別荘へ戻るなり、薄原建人が茶卓に置いていた、ずっと気に入っていた花瓶を叩き落とした。

がしゃん、と割れる音。

『役立たず。お前は徹頭徹尾、役立たずだ!』

薄原佑哉はその場で膝をついた。

『父さん……俺の落ち度です』

『会長の椅子はもう失った。次だ。薄原川人に、何ひとつでも上を行かれたら――俺が直々に、お前を潰す』

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