第78章

周防家の令嬢――周防美根子。

二ノ宮原子は特に何も感じず、軽くうなずいてから踵を返し、二階へ上がろうとした。だが背後から、薄原川人の声が飛ぶ。

『待て。それが礼儀か?』

原子の肩がぴくりと強張る。薄原川人の圧が、背中からじわりと押し寄せてくる。

けれど彼女は、周防美根子とこれ以上言葉を交わす気がなかった。

『具合が悪いの』

それだけ投げ捨てると、原子は二階へ上がり、部屋に入って鍵をかけた。迷いのない一連の動き。

ベッドに腰を下ろして間もなく、廊下から足音が近づく。

薄原川人が入ってきた。

片手で原子の顎をくいと持ち上げる。

『どういうつもりだ。俺に怒ってんのか?』

原子...

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