第80章

二ノ宮原子は、わずかに目を見張った。

二ノ宮正樹の背後に、人がいる……?

彼女が洗った資料には、そんな影は一切なかった。

隠し方が巧妙すぎるのか。あるいは、背後の力が強大すぎて――こちらが気配すら拾えないのか。

『俺に頼め』

……何?

薄原川人の細長い目に、底の読めない色が差す。

『頼めば全部片づけてやる。お前も分かってるだろ。俺が欲しいものは何か』

二ノ宮原子の心が、じわりと沈んでいく。

そう。分かっている。

薄原川人がずっと欲しがっているもの。

――自分の身体だ。

あの一度きりのあと、薄原川人は味をしめた。隙さえあれば、当たり前みたいに求めてくる。

けれど、原子...

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