第86章

『薄原様! お嬢さん!』

林原淳の声が外から飛び込んできて、薄原川人は苛立ちを隠さなかった。

『穴の前で待ってろ』

林原淳は何をやらかしたのかも分からないまま、言われるがまま入口の外に立つ。

それから三十分あまり。ようやく二人が穴から出てきた。

お嬢さんの頬が、目に見えて朱に染まっている。林原淳は一瞬で察した。

――俺、ほんとに死にたい。

『薄原様。二ノ宮正樹と二ノ宮薫子を連れ出そうとした者は確保しました。林原家の人間です。林原涼子の実家側――つまり、林原涼子の身内でした』

薄原川人は他の話に興味を示さない。車に乗り込むなり、二ノ宮原子の手を引き寄せ、指先を弄び続けた。

小...

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