第90章

二ノ宮原子がどうにか上体を起こすと、周防美根子はもうベッド脇まで来ていた。

指先で彼女の手の甲をすっとなぞり、舌打ちまじりに言う。

『かわいそう。前は薄原様、あなたのこと大事にしてたじゃない。……なに? もう飽きられたの?』

二ノ宮原子の声は掠れていた。けれど言葉だけは、鋭く床に落ちる。

『そうね。あなたこそ、一度だって薄原川人の目に入ったことある?』

周防美根子の顔に、ひゅっと凶気が走る。

『口だけは達者ね、二ノ宮原子。すぐ薄原家から叩き出されるわ』

『安心して。私が追い出されても、あなたがここに入れる順番は来ないから』

周防美根子の胸が苛立ちで上下する。そこへ大崎が歩み寄...

ログインして続きを読む