第94章

二ノ宮原子は、鈴原そらを憐れむように最後の一瞥をくれてから、地下室を出た。

階段を上がると、薄原川人がソファに腰を下ろして待っていた。

二ノ宮原子の背中に、冷たい汗が一気に噴き出す。

『会食に行ったんじゃ……どうして、こんなに早く帰ってきたの?』

薄原川人は重たい目で彼女を見据え、口元に愉しげな笑みを浮かべた。

『お前も連れて行こうと思ってな。……まさか、地下室に行ってたとは』

二ノ宮原子は否定しなかった。否定できる言葉が、見つからない。

『逃がしたいのか? どっちを。お前の親友か、それとも――あの男か』

胸の奥がざわつき、二ノ宮原子は焦るように薄原川人の隣へ歩み寄って腰を下...

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