第106章

車のタイヤがやられていた。四本すべてがぺしゃんこで、ボディには深い引っかき傷が何本も走っている。

江原安美はしゃがみ込み、目を凝らした。タイヤには刃物で突き刺した跡がはっきり残り、傷も明らかに人の手によるものだった。

胸の奥が、ひゅっと冷える。嫌な予感が背筋を這った。

周囲を見回しても、怪しい人影は見当たらない。なのに、恐怖だけが消えない。

この状態じゃ走れない。仕方なくタクシーを呼ぼうとしたが、ここは位置情報が拾えないらしい。安美は電波の入る場所まで歩き出した。

数歩進んだところで、背後に気配。

見られている――その感覚に、背中がぞくりと冷たくなる。

振り返らない。バッグを探...

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