第109章

川崎佑哉は何も言わず、腕の中の稲子を見下ろした。

『稲子。おじさんが帰り道で悪い人に殴られたら、どうする?』

稲子はぱっと顔を上げ、うるんだ目で江原安美を見つめる。

『ママ、おじさんケガしてるよ。泊まっていってもらおう? うち、客間あるし。おじさん、そこで寝られるよ』

「ダメよ」江原安美は即答した。

『ママ……』稲子は彼女の手をぎゅっと掴む。『おじさん、今日ママを助けてくれたんだよ。恩は返さなきゃって、ママが教えてくれたじゃん』

江原安美は言葉に詰まった。

確かに、そう教えた。けれど、まさか自分に向けて使われるとは思っていなかった。

稲子は畳みかける。

『もし帰り道でまた悪...

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