第111章

江原安美が書斎から出てきたちょうどそのとき、稲子と綿子が朝ごはんを買って戻ってきた。

稲子は肉まんの入った袋をぶら下げ、ぴょんぴょん跳ねるように駆け寄ってくる。

『ママ! ママの大好きなサーモンタコス買ってきたよ!』

「稲子、えらいね」

江原安美はしゃがみ込み、袋を受け取って稲子の頬にちゅっとキスをした。

『ママ、おじさんは?』

稲子は安美の背後をきょろきょろ見回し、『おじさん、もう行っちゃったの?』と小さく尋ねる。

「うん。おじさん、用事があって先に帰ったよ」

稲子の小さな顔がみるみる曇り、しょんぼりと「……そっか」と呟いて、俯いたまま家の中へ入っていった。

その小さな背...

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