第113章

江原安美はスマホを見つめ、どうしようもなくため息をついた。

午後4時。川崎佑哉は今日もきっちり、アトリエのビルの下に現れた。

今回は車から降りない。窓だけをすっと下ろし、彼女を見た。

「爺さんが、おまえと稲子を迎えに行けって」

江原安美は車に乗り込む。道中、二人の間に言葉はなかった。

幼稚園で稲子を迎えると、稲子は川崎佑哉を見た瞬間だけぱっと目を輝かせ――すぐにその光を引っ込めた。おとなしく、いつもの距離で言う。

「……おじさん」

川崎佑哉はしゃがみ込み、稲子の目線に合わせた。

「稲子。昨日のこと……おじさん、謝りたい」

稲子はふるふると首を振る。

「ママが言ってた。おじ...

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