第20章

太った男が彼女を値踏みするように見回した。

「おまえ、あいつの娘か? ちょうどいい。母親に言っとけ。もう騒ぐなってな」

「おまえの父は自分で足を滑らせて落ちただけ。現場の責任じゃありません」江原安美は冷えた声で言い切った。「それなのに、こちらは善意で治療費まで立て替えた。感謝しないどころか、金をせびるつもり? 労災かどうかは、あなたたちが決めることじゃない」

安美は一歩も引かなかった。

「もう弁護士を立てました。裁判が終わったら、誰が賠償するべきか、いくら払うべきか――きっちり決まります。誰だって、1円も逃げられない」

「へえ、威勢いいじゃねえか」男はにやにや笑った。「うちの社長が...

ログインして続きを読む