第23章

川崎佑哉は何度も口を開きかけた。だが、江原安美の冷えた横顔を見るたびに、言葉を喉の奥へ押し戻すしかなかった。

アトリエのビルの下まで送り届け、江原安美が降りようとした、そのとき。

「安美」

不意に呼び止められ、彼女は振り返りもしない。

「昨夜……」

江原安美は淡々と告げた。

「昨夜、あなたが鈴村千雪さんに会いに行ったことは、お爺さんには黙っておきます」

それだけ言うと、ドアを押し開け、頭も下げずに歩き去った。

川崎佑哉はその背中を見送り、苛立ちを押し殺せず、拳でハンドルを叩きつけた。

プァンッ、と耳障りなクラクションが鳴り響く。

江原安美の足が一瞬だけ止まる。だが、振り返...

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