第34章

川崎佑哉が通話を終えて戻ってくると、彼女の手首が空いているのに気づいた。

「ブレスレットは?」

「しまった」江原安美は顔も上げない。

「なんで付けない?」

「描きにくいから」

川崎佑哉が眉をひそめる。

「じゃあ左手に付ければいいだろ」

江原安美は「ふうん」とだけ返した。

「無理。もし割ったら、私じゃ弁償できないし」

「買った時点でおまえの物だ。壊れようが失くそうが構わない。ダメならまた買えばいいだけだ」

江原安美は答えない。動きもしない。

ブレスレットは、脇に置かれたままだった。

その無関心な態度に、川崎佑哉の目にははっきり不満が浮かぶ。

――けれど、何も言えなかっ...

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