第51章

江原安美が目を覚ましたとき、鼻腔いっぱいに消毒液の匂いが広がっていた。

ゆっくりと瞼を開ける。視界に入ったのは真っ白な天井とシーツ、そしてベッド脇に腰掛ける見知らぬ女――。

「江原さん、目が覚めましたか?」

女ははっとしたように立ち上がり、慌てて頭を下げる。

「川崎様のほうから手配されて、身の回りのお世話をすることになりました。今のお加減はいかがですか」

江原安美は唇を引き結び、答えない。

「江原さん……?」介護士が不安げに覗き込む。「先生を呼びましょうか」

「いらない」

掠れた声で、江原安美は言った。

「スマホ、持ってきて」

介護士は一瞬ためらったものの、結局はベッドサ...

ログインして続きを読む