第52章

周防弁護士は、江原安美が入院している病院を川崎佑哉に伝えた。

夕方。

川崎佑哉が病室のドアを押し開ける。

部屋にいるのは安美ひとりだけ。ベッドに腰掛け、横顔のまま窓の外の夕陽を見ていた。

川崎が彼女の傍に立つ。

「来たのね。……サインして」

安美の前には小さなテーブルが置かれ、その上に離婚協議書が広げられている。

「痩せたな」

川崎は紙に目を落とさないまま、低い声で言った。

「この数日、ちゃんと食べて、休めてないだろ。医者も言ってた。おまえは――」

「サインして」

安美が同じ言葉をなぞる。

川崎は、ようやく協議書を見た。だがペンを取らない。

「江原安美……今回のこと...

ログインして続きを読む