第70章

陸田明広はよろめきながら二歩ほど下がり、体勢を立て直すと、口元の血を乱暴に拭った。次の瞬間、踏み込んで――拳を叩き返す。

二人は取っ組み合いになった。

殴って、蹴って。譲る気など、どちらにもない。

どれほど経ったのか。

互いに顔を腫らし、息を荒くしながら壁にもたれた。

川崎佑哉が陸田明広を睨み、肩で息をしつつ吐き捨てる。

『陸田明広、おまえほんとに恥ってもんがないな。人の女ばっか狙って、横取りしようとして』

陸田明広は鼻で笑った。

『横取り? 川崎佑哉、おまえ何か勘違いしてないか。おまえと安美はもう離婚した。今の彼女は独り身だ。俺が追う権利はある』

『横取りって言うなら、先...

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