第75章

週末、遊園地。

江原安美はマスクにサングラスという完全装備で、稲子の手を引きながらゴーカートの列に並んでいた。

本当は、こんな人の多い場所に来たくなかった。どこかで見られて、噂が川崎佑哉の耳に入ったら面倒だ。

けれど稲子が行きたがった。断るなんて、できなかった。

気をつけていれば――たぶん大丈夫。

安美は視線を落として稲子に尋ねる。

『あとで、どの車に乗りたい?』

稲子は顔を上げ、目をきらきらさせた。

『ママ、赤いのがいい!』

『うん。赤にしようね』

列はじりじりと前へ進む。

そのとき、横から二人がぐいっと割り込んできて、安美たちの前に入った。

小綺麗に着飾った女が、...

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