第84章

江原安美のスマホが鳴った。

手に取って画面を見ると、陸田明広からの着信だった。

こんな時間にかかってくるなんて――胸の奥が、いやな予感でざわつく。

『安美、稲子が熱出した』

受話器の向こうの陸田明広の声は、焦りを隠しきれていない。

『39度5分。ずっと泣いて「ママに会いたい」って。今、病院に連れてきてる。来られるか?』

江原安美の心臓がきゅっと縮んだ。

『どこの病院? すぐ行く』

『市立こども病院。救急外来』

『分かった、今向かう』

通話を切り、立ち上がって周防岩人を見た。

「周防様、申し訳ありません。家族が具合を崩して……今すぐ病院へ行きます」

周防岩人は一瞬きょと...

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