第85章

電話の向こうが、数秒沈黙した。

『周防様。酔ったなら鈴村千雪を呼べばいいでしょう。どうして私に?』江原安美の声はひどく淡々としていた。『彼とは関係ありません』

『分かってる、分かってるんだが……でも今の状態じゃ、俺ひとりじゃどうにも――』周防岩人が言い終える前に、遮られる。

『周防様、私、子どもの世話があります。時間ありません』江原安美は冷たく言った。『鈴村千雪に連絡してください。きっと喜んで来ますから』

通話はそこで切れた。

周防岩人はスマホを見つめ、苦笑する。

……まあ、予想どおりか。

代行でも呼んで川崎佑哉を連れて帰らせるか、と考えた矢先、スマホが鳴った。

鈴村千雪。

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