第88章

川崎佑哉はしばらく黙ってから言った。

『……おまえの言うとおりにする』

周防岩人が笑う。

『よし、俺が段取りつける』

食事を終えると、二人は個室を出た。

エンジンがかかり、車は駐車場を抜けていく。

周防岩人はハンドルを握りながら鼻歌まで口ずさみ、やけに機嫌がいい。

川崎佑哉は助手席にもたれ、窓の外の街並みを眺めたまま、何を考えているのか分からない顔をしていた。

しばらくして、ふいに口を開く。

『なあ……あいつ、なんであいつを選んで、俺じゃないんだ?』

周防岩人は一瞬、間の抜けた顔で彼を見た。

川崎佑哉の表情は静かだった。けれど、その目の奥にだけ、言葉にしづらいものが揺れ...

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