第95章

川崎佑哉はもともと、江原安美に隠れて稲子と会っていた。そんな状況で、安美に自分から電話なんてできるはずがない。

『いま、お母さんは忙しいと思う』

『それは……すみません』

担任は少し色気のある男に弱いところはあったが、男より仕事が大事だ。勝手に稲子を連れ出させるわけにはいかない。

『大丈夫。じゃあ学校の中で稲子と遊んでるよ』

『でも、もうすぐみんなご飯を食べたら一斉にお昼寝なの』

すると稲子がぱっと声を張り上げた。

『先生、稲子お昼寝しなくていい! おじさんと外で遊びたい!』

『ええ……』担任は困った顔になる。

『先生、お願い。ちょっとだけ! 午後の授業はちゃんと出るから!...

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