第98章

彼は目を細め、腕を伸ばして彼女の腰を抱き寄せた。引き寄せるなり、俯いて首筋に――容赦なく噛みついた。

キスじゃない。噛みついたのだ。

歯が皮膚に深く食い込み、鋭い痛みが走る。

江原安美は息を呑み、肩を押し返す。『川崎佑哉、何してるの!』

だが彼は離さない。むしろ、さらに強く噛んだ。

痛みで目尻が赤く滲み、江原安美は反射的に平手を振り抜いた。

ぱんっ。

静まり返った車内に、乾いた音がやけに響く。

川崎佑哉の顔が横を向き、遅れて指の跡がじわりと浮かび上がった。

江原安美は固まった。――避けないなんて、思わなかった。

『あんた……』唇がかすかに開く。

川崎佑哉はゆっくり顔を戻...

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