第1章

外の雨は降り止まず、その一滴一滴が私の胸を締め付けた。

私は希美の小さなベッドのそばに座り、二度と目を覚ますことのないくまのぬいぐるみを抱きしめていた。部屋のすべてが三日前と寸分違わぬままだった――机に散らばった色鉛筆、壁に貼られた「私たち家族三人」の絵。そこでは棒人間のお母さんとお父さんが小さな女の子と手をつなぎ、みんな満面の笑みを浮かべている。

今ではそのすべてが、残酷な冗談のように思えた。

サイドテーブルに置かれた絡まった配線と小さな電球を指でなぞると、また涙で視界が滲んだ。それは希美の最後の工作――決して完成することのなかった常夜灯だった。

「お母さん、お父さんね、暗いのが怖いんだって。だから、世界で一番きれいな常夜灯を作ってあげたいの」

娘の無邪気な声が、今も耳に残っている。それは父の日を翌日に控えた日、希美が、自分にほとんど目を向けない父を驚かせようと、ガレージに忍び込んだ日のことだった。

そのサプライズが、娘の命を奪うことになるなんて、どうして知り得ただろうか。

「悟!」私は歯を食いしばった。涙がくまのぬいぐるみの毛皮に落ちる。「あの子は、ただあなたの暗闇を追い払いたかっただけなのに……」

心が血を流しているようだった。七歳の希美は、家にほとんどいない父に光を届けようとして、その小さな命を落とした。そして私は、母親である私は、あの子を守れなかった。

どれくらいその部屋に座っていただろう。夜が完全に更け、雨脚がさらに強まるまで。斎場に行かなければならない。この世で過ごす娘の最後の夜に、付き添ってあげなければ。

その夜八時、斎場の安置室は控えめな明かりに照らされていた。

希美は小さな白い棺の中で、眠れる天使のような青白い顔をして、安らかに横たわっていた。私は丸一日、ここで付き添い、一番に来るべきはずの男を待ち続けていた。

私の夫。私の娘の父。

廊下から足音が響いた。

東山悟が、ようやく来たのだ。

私は息をのみ、心臓が激しく鼓動した。もしかしたら――もしかしたら希美の顔を見れば、自分が何を失ったのかを理解してくれるかもしれない。泣いて、後悔して、気づいてくれるかもしれない――

彼は慌ただしくドアを押し開けて入ってきた。ビジネススーツを非の打ち所なく着こなし、髪の一筋たりとも乱れていないその姿は、まるでこれから大事な会社の会議にでも向かうかのようだった。彼の視線が棺に向けられたとき、私は彼の顔を食い入るように見つめた。彼が泣き崩れるのを、涙を流すのを待っていた。

だが、涙は一滴もなかった。

悟は棺に近づき、希美を見下ろした。その表情は恐ろしいほどに穏やかだった。それどころか――彼の顔には、安堵に似た何かがよぎったようにさえ見えた。

心臓が氷の深淵に叩き落されたような感覚だった。

「明日の葬式は何時からだ?」彼は、天気でも尋ねるかのような気軽さで言った。「保険関係の書類は全部片付いているか?」

え?

世界がぐらりと揺れた。聞き間違えたのだろうか? 今、彼は保険の書類について尋ねたのか?

「悟、あなたの娘よ!」私の声は喉から絞り出すように震えていた。

「そうか?」彼は視線も上げず、骨の髄まで凍えるような無関心さで言った。「本当に、俺の子なのか?」

「あなた、正気なの!?」私は足をもつれさせながら立ち上がった。「希美よ! あなたの希美なのよ! あの子はあなたのために父の日のプレゼントを作ろうとして――」

「俺の?」悟はそこでようやく私を見た。その瞳には何の温かみもなく、まるで他人を見るかのように冷え切っていた。「玲奈、この子がどうやってできたか、俺たちは二人とも分かっているはずだ。七年間、いい父親の役を演じてきた。だがもう……この茶番を終わらせる時だ」

この茶番を終わらせる?

その言葉は、鉄槌で心臓を打ち砕かれたような衝撃だった。私は目の前にいるこの見知らぬ男を見つめ、自分の耳を疑った。

これは本当に悟なの? 医大で私に微笑みかけてくれたあの悟? 希美が七年間、「お父さん」と呼んできたあの悟?

「何を言っているの?」声は、食いしばった歯の間からかろうじて漏れた。

「はっきり言ったつもりだが」悟は、松本桃子に会いに行くときのように、焦った様子で腕時計に目をやった。「この結婚は最初から間違いだった。今度こそ……これは好機かもしれん」

好機? 娘の死が、好機だって?

全身の血が凍りつくのを感じた。彼は、本当にそう言ったのだ。娘の棺の前で、娘の死を好機だと。

「まだ七歳なのよ!」私の声はかすれ、涙が止めどなく頬を伝った。「あの子はあなたを『お父さん』って呼んだ! あなたの絵を描いた! あなたのために常夜灯を作りたがっていたのよ! 悟、あの子は私たちの娘なの!」

「お前の娘だ」彼は冷たく訂正した。

その瞬間、心臓が止まった気がした。お前の娘? どうして、そんなことが言えるの?

希美が毎晩窓辺で彼の帰りを待っていたこと、彼女が描いた家族の肖像画、他の子たちに「私のお父さんは一番かっこいいの」と自慢していたことを思い出した。

ずっと、彼の心の中では、希美は娘ではなかったのだ。

その時、悟の携帯電話が鳴った。

彼の顔に一瞬浮かんだ柔らかな表情を見て、私の心は粉々に砕け散った。私や希美に、彼はそんな表情を見せたことなど一度もなかった。

彼は電話に出た。「桃子……うん、斎場にいる……わかった、すぐ行くよ」

桃子。

娘の棺の前に立っていても、彼の頭にあるのは彼女のことだけ。喉の奥から苦いものがこみ上げてくるのを感じた。

「行くの?」私は信じられない思いで彼を見つめた。「希美の告別式に、松本さんのところへ行くっていうの?」

悟はすでにドアに向かって歩き出していた。「また明日な、玲奈」

だめだ、このまま行かせてはいけない!

「待って!」私は駆け寄り、彼の携帯電話をひったくった。画面に表示されたチャット履歴が、私の血を瞬時に凍りつかせた――

昨日 22:15 桃子から「悟、ホテル予約したわ❤️」

悟「葬式が終わったらすぐに出発しよう」

今日 18:30 桃子「あの子はもうあなたを悩ませない。やっと堂々と一緒になれるのね」

悟「ああ、やっと自由だ」

やっと自由だ。

私の手は激しく震え、携帯電話を落としそうになった。つまり悟にとって、私と希美はただの足枷でしかなく、娘の死は彼の解放だったのだ。

三日前、希美が事故に遭った時のことを思い出す。私が半狂乱で電話をかけ、泣きながら戻ってきてほしいと懇願した時のことを。彼は忙しい、できるだけ早く病院に行くと言った。

何に忙しかったというのか? 桃子と、私たち抜きでの人生を計画することに?

「どうしてこんなことができるの?」堰を切ったように涙があふれ出し、全身が震えた。「悟、あの子はあなたの血を分けた子よ! 誰よりもあなたを愛していたのに!」

激しい感情にめまいがし、あの胸の締め付けられるような感覚が戻ってきた。私は壁に手をつき、体を支えようとした。

「携帯を返せと言ったんだ」

悟はためらうことなく私の手から携帯電話を奪い返し、大股でドアに向かった。戸口で、彼は一瞬立ち止まった。

「玲奈、現実を見ろ。この結婚はそもそもすべきじゃなかったんだ」

外には、銀色の高級車が停まっていた。窓越しに、街灯の下でなめらかな黒髪を揺らす桃子の姿が見えた。

悟は一度も振り返ることなく、その車に向かって歩いて行った。

追いかけて、彼を掴んで、「あなたに人間としての心は残っているのか」と問い詰めたかった。しかし、足は鉛のように重く、一歩も動けなかった。

バタン――

車のドアが閉まる音は、まるで棺の蓋が閉まる鈍い音のように響いた。

私は床に崩れ落ち、雨の夜に消えていくあの車を見送った。私は、二度とお父さんの帰りを待つことのない娘と、斎場に二人きりだった。

椅子に体を沈め、両手で顔を覆った。涙は枯れ果て、虚しい絶望だけが残った。

三日前の午後、希美がガレージに忍び込み、小さな手を震わせながら配線をつないでいた時のことを考えた。もしあの時私が止めていたら、もし私が夕食の準備をするためにキッチンに行かなかったら、もし……

もし悟が家にいたら、希美はあの常夜灯を作るためにガレージには行かなかったはずだ。

もし悟が一度でも私たちを愛してくれていたら、この悲劇は決して起こらなかった。

私はゆっくりと棺に歩み寄り、娘の安らかな顔を見つめた。希美の小さな手の中に、折りたたまれたカードを見つけた。

「最高のお父さんへ――あんまりおうちに帰ってこないけど、希美はそれでもお父さんのことが大好きだよ。この常夜灯が、お父さんが希美の怖いのを追い払ってくれるみたいに、暗いのを追い払ってくれるといいな」

下には希美の拙いサインと、その横に小さなハートが描かれていた。

最高のお父さん。

私はそのカードを強く握りしめ、再び涙を流した。私の娘は、死ぬ間際まで、自分を愛してくれない男を愛し続けていた。そして私は、愛する価値のない男を、丸八年間も愛してしまっていた。

先月受け取った健康診断の結果、まだ悟に伝える機会のなかった知らせのことを思った。これでよかったのかもしれない――少なくとも、彼は私のことをもう一つの「重荷」として心配する必要はなくなるのだから。

外では雷が轟き、まるで天がこの罪のない小さな天使のために泣いているかのようだった。

明日の葬儀が終わったら、私は東山家の豪邸を出て行こう。悟が私たちを望まないのなら、彼に自由を与えよう。これからは、私はもう東山悟の妻ではなく、ただの中村玲奈になる。

でも、私はいつまでも希美の母親だ。

あの子のそばにいられる時間はもうあまり残されていないかもしれないけれど、息をすることができる一日一日を、あの子の思い出のために、精一杯生きていこう。

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