第111章 結城凝香は来たことがあるか?

紀藤瑛介の通話内容は、結城凝香の耳にもはっきり届いていた。けれど胸の内は、不思議なくらい凪いだままだった。

もう大人だ。紀藤瑛介が何をしようと彼の自由で、彼女が止める筋合いもない。

結城凝香はもう一度ベッドに身を沈め、目を閉じる。

――だが、今夜はそう簡単に眠らせてはくれないらしい。

まだ寝つけないうちに、紀藤瑛介の秘書が病室へ入ってきた。

ここは病院だ。何度も何度も出入りして、いったい何がしたいのか。

苛立ちがそのまま声に滲む。

「紀藤瑛介に仕事を振られたんでしょう。処理しないで、なんでここに来るの」

秘書は助けを求めに来たのだろう。顔色を変え、縋るように頭を下げた。

「...

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