第40章 それはよかった

二階の個室はどれも、専用のトイレつきだった。結城凝香がトイレに入ったばかりで、まだ鍵をかける前。

――ガチャ。

扉が乱暴に開き、紀藤瑛介が踏み込んできた。

結城凝香は顔をしかめ、氷みたいな声で言い放つ。

「何しに来たの? まさか覗き趣味でもあるわけ?」

紀藤瑛介は陰を落とした目で、じりじりと距離を詰めた。視線が危うい。

結城凝香は一歩下がり、背中が壁に当たる。苛立ちが増す。

「出ていって。今、使うの!」

「何を怖がってる。俺が怖いのか?」

紀藤瑛介の声が低くなる。

「さっき他の男にキスしてた時は、怖がるどころか笑ってたくせに。……俺のこと、ちゃんと目に入ってるのか?」

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