第55章 お前は恩知らずだ

前回は不愉快な形で終わった。

結城秀明と結城梅香は、結城凝香との関係をどうにか和らげなければならないと痛感していた。もし本当に結城凝香が紀藤瑛介と離婚などしたら、家に与える影響が大きすぎる。

そのため結城家はビジネスレセプションの席で、あえて凝香を「家に戻らせた」。

欠席すれば欠席したで、裏で何を言われるかわからない。結城凝香は結局、結城家へ足を運ぶことになった。

今回、凝香が選んだのは黒のドレスだった。無駄を削ぎ落とした端正なデザインに、深い色味のジュエリーを合わせる。派手さはないのに、どこか艶のある高級感だけが際立つ。

――けれど。

会場の隅で静かに腰を下ろした、その瞬間だっ...

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