第86章 紀藤社長、私たちは間違っていました

紀藤瑛介は結城凝香を抱えたまま、まっすぐ自宅へ連れ帰った。最近、葉月清奈はここに泊まっていない。瑛介がすでに彼女を実家へ戻していたからだ。

――でなければ、凝香を抱いて帰ってきた瑛介を見て、また余計な勘ぐりをされる。

車中、二人は終始無言だった。

凝香は話す気になれず、瑛介は瑛介で、全身から低気圧を放っている。

ソファにそっと下ろされた凝香を、瑛介は眉を寄せたまま見つめた。

この沈黙が、凝香にはひどく居心地が悪い。しかも手首と脚には縄の跡が赤く残り、ひりつく痛みまである。早く手当てをしたかった。

凝香は小さく眉をひそめ、戸惑いながら尋ねる。

「……なんでそんな目で見るの。私、何...

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