第87章 君は本当に哀れだ、誰にも愛されない

紀藤瑛介が書斎へ向かうと、結城凝香は椅子から立ち上がり、そのまま外へ出た。玄関を抜けて庭に足を踏み入れたところで、正面から葉月清奈が歩いてくるのが見える。

葉月清奈は、伊吹哲平の両親に頼まれて「情状酌量の口添え」をしに来たのだという。紀藤瑛介に伊吹哲平を見逃してもらうために。

――もちろん、表向きは。

本当は、結城凝香がここにいると知ったからだ。自分がいない間に、紀藤瑛介と結城凝香の距離が縮まったら困る。そう思った瞬間にはもう、身体が勝手に動いていた。

結城凝香の姿を見つけた葉月清奈は、胸の奥でどろりとした憎悪を煮詰めながらも、口元だけを笑わせた。

「結城凝香。離婚するとか言ってた...

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