第108章

和泉静留は胸を躍らせながらドアへ駆け寄り、勢いよく鍵を外して扉を開けた。

――けれど。

そこに立っていたのは、両腕いっぱいに薔薇の花束を抱えた江原信也だった。

江原信也は、わざとらしいほど甘い笑みを貼りつけると、静留に向かってひらりと手を振る。

『静留、ここ……探すの大変だったんだよ』

「……どうして、あなたがここに?」

和泉静留は冷えた目で見据え、眉間に深い皺を刻む。

『会いたかったからに決まってるだろ? わざわざ来たんだ。就活のときに書いてた住所がなきゃ、さすがに見つけられなかったけどさ』

そう言いながら、江原信也は薔薇を差し出す仕草をする。

静留は身をひねって避け、視...

ログインして続きを読む