第116章

タクシーで家へ向かう道すがら、和泉静留は車窓の景色を面白がって眺めていた。すると突然、和泉お母さんが彼女の袖をくいっと引っ張る。

『静留、あんたといつも一緒にいたイケメンの子は? 今日は見かけないけど』

言うまでもなく、平岩空人のことだ。

和泉静留はさっきまで笑っていたのに、その一言で表情がぴたりと固まった。

――母に、空人のことをどう説明すればいい?

自分がいちばん助けを必要としていたとき、平岩空人は姿を消した。あとから連絡は来たけれど、静留の中ではもう失望が限界まで積み上がっている。これ以上、関わりたくない。

そもそも住む世界が違う。どういう経緯で知り合ったにせよ、彼が去った...

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