第150章

平岩碧人の企みを、平岩家の人間はまだ誰も知らない。

平岩空人は碧人を見送るや否や、すぐさまリビングへ戻った。

足を踏み入れた瞬間、中年の女性が早足でこちらへ出てくる。

手入れの行き届いた身なり、柔らかな物腰。平岩空人の母――鈴野礼美子だった。

礼美子は空人の顔を見た途端、堪えきれなくなる。

目元が一気に赤く染まり、駆け寄ってきて彼を強く抱きしめた。声は震え、喉の奥で詰まる。

『空人……やっと帰ってきたのね! どれだけ心配したと思ってるの。……もう二度と会えないんじゃないかって……』

この日々、礼美子は痛みと不安の中で生きていた。食べられず、眠れず、ただ息をしているだけ。

空人...

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