第41章

和泉静留はほとんど反射的にバッグへ飛びつき、スマホを引っ掴んだ。

指先が震える。画面を解除し、緊急通報のボタンに触れる――その瞬間。

バスルームの扉が、ふいに開いた。

江原信也が裸のまま、腰にバスタオルだけを巻いて立っていた。口元に薄い笑みを貼りつけ、静留を見下ろす。

「誰に知らせるつもりだ?」

江原信也は責め立てるでもなく、ただそこに静かに立ち、観察するように彼女を眺めている。

静留の呼吸が喉で止まった。彼がゆっくり歩み寄ってくる。目の前に立たれた途端、光が遮られ、視界が陰る。

心臓が止まるかと思った。手がぶるりと揺れて、スマホが滑り落ちそうになる。

まさか戻ってくるなんて...

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