第45章

平岩空人のどこにも病人らしさはなかった。顔色は普段どおり、意識もはっきりしている。手には途中まで読みかけの本。ドア口に呆然と立つ和泉静留を見ると、彼は眉をわずかに上げた。

「何か用?」

静留はそこでようやく我に返る。振り向けば、さっきまで後ろにいた華蓮と平岩景也の姿が消えていた。

「……あの小鬼ども」

歯を食いしばって小さく吐き捨てる。頬が気まずさでじわりと熱くなった。

「ふたりが、熱があるって。ひどい高熱だって言うから」

静留の説明を聞いて、空人は一瞬きょとんとし、それから察したように目元にかすかな笑みを宿した。気づかれない程度の、ほんの一瞬。

本をベッドサイドに置き、掛け布...

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