第8章

平岩空人の体が、びくりと強張った。反射的に手を押し返そうとする。だが掌に触れたのは、温かく柔らかな肌だった。

薄い梔子の香り。酒気を含んだ、どこか懐かしい匂いがふわりと鼻腔へ流れ込み、胸の奥をちくりと揺らす。

「……この布団、なんでこんなにあったかいの?」

和泉静留が彼の首元に顔を埋め、酔いのだるさを含んだ甘ったるい声を漏らした。指先は落ち着きなく、彼の胸元を探るように撫で回してくる。

「私のベッドよりずっと気持ちいい。ぬくぬく……」

彼女は布団に入った直後、いつも手足が氷みたいに冷たい。

その指が、不意に平岩空人の喉仏をかすめた。外されかけのボタンの隙間へ入り込み、ひんやりとし...

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