第85章

『だから俺が言ってる『証拠』ってのは、あいつの違法行為のことだ』

平岩空人はわざとゆっくり言った。和泉静留に、考える時間をたっぷり与えるように。

『お前の父親は、長年ビジネスの世界を泳いできたんだろ。違法なことに手を出したことはないのか? 手元の資産に、裏の金――グレーな取引が混じってないのか?』

『もしあるなら、それが一番効く。お前の父親を倒すための、最大の武器になる』

それは、和泉静留の急所を突いたらしい。眉間にしわを寄せ、明らかに思案する表情になる。

だが、しばらく考えた末に、彼女は小さく首を振った。

『……私の手元には、ない』

そう口にした静留の顔には、どこか後ろめたさ...

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