第87章

「ママ、いつごはん食べに行くの?」

 華蓮がぱたぱたと駆け寄ってきて、張りつめていた空気をあっさり壊した。和泉静留の手に甘えるように頬をすり寄せ、『華蓮、おなかぺこぺこ。ごちそう食べたい』と無邪気にねだる。

「いいよ。ごちそう、食べに行こうね」

 和泉静留は華蓮を抱き上げ、白くて柔らかな頬にちゅっと二度キスを落とした。

 ここ数日、胸が温かくなる出来事がいくつもあった。今の自分の動きだけで和泉国見を引きずり下ろせるほどではない。けれど、小さな穴が堤を崩すことだってある。静留の積み重ねが、いつか勝利のきっかけにならないと誰が言えるだろう。

 その日を、ただ静かに待てばいい。大きな建物...

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