第9章

「パパ……」

少年の声はしゃくり上げるように震えていた。短い脚で全力疾走し、そのまま平岩空人の胸へ飛び込む。

空人は迷いなく腕を伸ばし、正確に息子を受け止めると、背中を軽くぽんぽんと叩いた。

「いい子だ」

低い声にやわらかな温度が滲む。ぱっと見れば、絵に描いたような父子の団らん――。

だが、その光景を誰にも気づかれぬ暗がりから、じっと覗いている視線があった。

少年の顔立ちをはっきり捉えた瞬間、その目は驚愕に見開かれる。

空人はやさしく少年を抱き上げ、自分の膝の上に収めた。

「どうして帰ってきてくれないの?」

平岩景也の声はどこか素直になれず、瞳の奥には意地のようなものが残っ...

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