チャプター 9
召使いが言い終えるやいなや、すでに誰かが車椅子を押して部屋へ入ってきていた。
ノーランは怒りで顔を真っ赤にし、さらに言い募ろうとしたが、結局は口をつぐむしかなかった。
ウィリアムが軽く手を叩くと、召使いたちが次々と入ってきて、それぞれ高価な宝飾品の詰まった箱を抱えていた。
チェイスは、先ほど伝言を運んできた召使いに鞄を何気なく渡し、冷えた気配を含ませた声で新たに入ってきた連中へ目を向けた。ウィリアムが持ち込ませた品々を指し、興味がありありと顔に出ている。
チェイスは丁寧に言った。「ブラウンさん、お越しいただけて光栄ですが……その荷物は何です?」
「婚約者が恋しくなって、会いに来ただけだ。これはブラウン家からマルティネス嬢への贈り物だ」ウィリアムの目には温度がなかった。
信じるかどうかなど、どうでもいいというふうだった。そう言いながら彼は顔を上げ、まだ食卓に座ったままのアメリアを見て、こちらへ来いと手で招いた。
アメリアはためらいなく白い目を向けたが、それでもゆっくり立ち上がり、歩いてきた。
眩い宝石の数々に目を奪われる者がほとんどだろうに、彼女はちらりと見ただけで、視線はどこか虚ろで、心が動いた様子もない。
まるで、彼女が原因で生じた緊張など、まったく効いていないかのようだった。彼女は外野の人間みたいに、この場からきれいに切り離されている。
ようやくメイベルをなだめたばかりのビアンカは、この光景を見て薄く笑った。だが、その目に浮かぶ嫉妬はほとんど手に取るようにわかる。
「アメリア……」ビアンカは下唇をそっと噛み、困ったような顔を作った。「今日はブラウンさんもいらしてるし、私が言うのも違うってわかってるけど……」
「ふさわしくないなら、言わないで」アメリアが遮った。
ビアンカの顔が一瞬こわばった。掌を強く握りしめ、痛みで涙が滲んで、いっそう可哀想に見える。「でも、言わなきゃ。おばあさま、あなたのせいで動揺しすぎて、食事もできないの……」
彼女はウィリアムを一瞥し、さらに困惑したように視線を揺らした。
アメリアは、無垢でか弱そうなビアンカの顔を見つめながら、あとでどちらの頬を叩くかをすでに考えていた。
いっそ両方か。
そうすれば左右対称で、ビアンカもきっと気に入るだろう。
アメリアは、試してみたくてたまらなくなりかけていた。
どれほど世間知らずでも、ビアンカにはアメリアの視線が普通じゃないことがわかったのだろう。半歩退き、続ける勇気が出ない。
ビアンカが黙り込んだのを見て、アメリアは手をこすり、少し残念そうにした。
ウィリアムが言った。「マルティネスさん、アメリアは戻ったばかりで、シルバーライト市のことに詳しくない。今日は俺が案内役になって、街を見せて回る」
案内役? チェイスとアメリアは同時に車椅子へ目を向け、同じことを思った。
その視線に気づいたウィリアムは、唇の端をわずかに吊り上げた。
チェイスは答えた。「わかった」
「待って!」後ろから、ビアンカが突然また声を上げた。携帯端末を掲げている。「アメリア、ブラウンさんと出かけるのはまた今度にしたら? 今日はシルバーライト市の社交界の有力者たちに会えるよう手配してあるの。逃したらだめよ」
「私の知らない話は、私には関係ない」アメリアは眉をひそめ、ぶっきらぼうに言い返した。
こんな話、ビアンカは今まで一度も口にしなかった。そんな「親切」を信じる気にもなれない。
「ママ……」ビアンカは甘えた声で呼び、エイヴァの腕を引いて口を尖らせた。「アメリアを説得して。もうみんなに言っちゃったの。彼女に会えるのを楽しみにしてるんだから」
アヴァはビアンカの手をぽんぽんと叩き、無関心なアメリアをちらりと見やって、どこか困ったような顔をした。ためらいが過ぎても、結局彼女は口を開かなかった。アメリアはあれほど苦しみ、ようやく戻ってきたのだ。アヴァは、本人が望まないことを無理にさせたくなかった。
アヴァは言った。「アメリアは帰ってきたばかりよ。今日は誰かに会うのを急ぐ必要なんてないわ。行きたくないなら行かなくていい。ジャクソン家にはあとで私から連絡する」
ジャクソン家は、ブラウン家、ホワイト家と並び、シルバーライト市の三大名家のひとつで、強い影響力を持っていた。
ジャクソン家の令嬢フェイ・ジャクソンは、お茶会や各種の催しを開くのが好きだった。ジャクソン家の名声ゆえに人は集まり、また中堅どころの社交界の面々は、娘をその集まりにねじ込むためなら手段を選ばない者も多かった。
ビアンカはなおも納得できない様子で、指先をいじりながら続けた。「でも、アメリアを連れて来ないなら、もう私のことは招待しないって言われたのよ」
アヴァの表情はいっそう曇った。
アヴァがビアンカの味方をしないのを見て、アメリアの目つきが一瞬だけ和らいだ。
アメリアは手を差し出し、「だったら、やり取りの履歴か通話の録音を見せて。……それか今すぐ電話して、確認して」と言った。
「そ、それは……」ビアンカはうろたえた。アメリアとウィリアムを外に出させないために思いついた口実にすぎず、実際に何か手配していたわけではない。アメリアは本当に、思いどおりに動いてくれない。
「アメリア、ビアンカはもう段取りを組んだんだろう。なら、行って様子を見てみないか? 何しろ僕は君の婚約者だ。付き添える。いいかな?」ウィリアムはそう言い、使い込まれてつるりと磨かれた車椅子の肘掛けを指先でなでた。その言葉に年長者たちは動じなかったが、若い連中は目を見開いて息をのんだ。
この界隈では、ウィリアムが商売では冷酷で、若い世代が主催する集まりには決して顔を出さないことで知られていた。
だがアメリアは、彼が自分の名を呼ぶその口ぶりに嫌悪を覚えつつも、少し考えてから頷いた。
面白そうだ。新しくて刺激的なものは嫌いではない。
「マルティネスさん、どう思う?」ウィリアムが尋ねた。
ビアンカは断りたかったが、断れなかった。引きつった笑みを作り、頷くしかない。
話が決まると、彼らは下で待ち、アヴァがアメリアを二階へ連れて行って着替えさせた。アヴァは小声でいくつか忠告をし、その目には心配があふれていた。
「背中のファスナー、上げるの手伝ってくれる?」アメリアは手を伸ばそうとし、届かずにもどかしそうに言った。
アヴァが近づくと、日に焼けた肌が目に入った。そこには、薄く古い傷跡がいくつも残っていた。
アヴァの手が止まり、目が赤く滲んだ。
「どうしたの?」アメリアが尋ねた。
「なんでもないわ」アヴァは深く息を吸い、アメリアのドレスのファスナーを上げると、足早に部屋を出て、自分の部屋へ引っ込んだ。
扉を閉めた途端、涙が頬を伝って止まらなかった。
アメリアはこの数年、どれほど辛い目に遭ってきたのだろう。
母としての自分の落ち度だった。
アメリアはそのことに気づいていない。背中の傷など、ほとんど忘れていた。
身支度を整え、出て行こうとしたところで、扉口にメイソンが立ちはだかった。
「警告しておく。パーティーでは余計なことはしゃべるな。母さん父さんやマヤの恥になるような真似をするなよ」メイソンは言った。
