第195章

零崎折識は小鹿のように目を丸くし、呆然と立ち尽くしていた。その瞳には明らかな戸惑いの色が浮かんでいる。

「チャンスは一度きりだ」

星野煌が薄い唇を開き、静かに告げた。

星野煌の腕の中から抜け出した零崎折識は、一度瞳を閉じてドラマに出てくる妖艶な女たちの仕草を思い浮かべた。

意を決し、カツカツとヒールの音を響かせながらゆっくりと近づく。潤んだ瞳で見つめながら眉を寄せ、甘く蕩けるような声を出した。

「フランスに行きたいの。だめ?」

その媚びを含んだ猫なで声には、魂を奪われるような魔力が宿っていた。

星野煌の体が強張った。喉仏が上下し、今にも彼女を押し倒してしまいそうな衝動に駆られる...

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