第61章

どちらが誘惑したというのか。

零崎折識はこれ以上彼と揉める気になれず、適当になだめて急いで出勤した。

ところが会社に着くと、なんと黒川天誠がロビーのソファに座っていた。

受付の女性は事情を知らず、零崎折識を見るなり満面の笑みを向けてくる。

「折識さん、お客様がわざわざお待ちですよ。提携のお話だとか」

彼を目にした瞬間、彼女の表情が曇った。

「黒川さん、どうしてこちらへ?」

彼女は無表情で歩み寄った。昨日きっぱりと断ったのだから、身の程をわきまえて引いてくれると思っていたのだが、まさかさらに踏み込んでくるとは。

「物件探しに決まっているだろう」

黒川天誠は冷笑した。

「零崎...

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