第68章 独身

綾瀬玲奈は名家の生まれで、幼い頃から厳格な教育を受けて育った。多少強気で反抗的な一面はあるものの、根は古風な女性だ。彼女の中には「初夜は新婚の夜に捧げるもの」という確固たる信念があったのだが——それを、あろうことか葉山天に、訳も分からぬまま奪われてしまったのだ。

葉山天は、玲奈に張られて熱を持った頬を撫で、密かに溜息をついた。服を着て部屋を出ようとする。弁解する気にはなれなかった。どんな理由があろうと、玲奈を抱いてしまった事実は変わらないからだ。

「待ちなさい、この人でなし! 私たちの約束を忘れたの? 私があなたの義母だってこと、忘れたわけ? これからどうやって生きていけばいいのよ!」

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