第77章 体で賄賂

馬田華は病院の副院長という要職にありながら、その評判はすこぶる悪い。功名心が強く、手柄は自分のもの、失敗は他人のもの。上には媚びへつらうばかりで、実力など欠片もない男だ。今の地位があるのも、ひとえに妻の実家のコネのおかげである。

病室を出た馬田華の表情は、瞬く間に陰惨なものへと変わった。医師や看護師の面前でこれほどコケにされたのは、彼にとって初めての屈辱だ。あの身の程知らずな医者に、厳罰を与えてやらねば気が済まない。

執務室に戻ると、馬田華はすぐに泉川久守に電話をかけ、部屋に来るよう命じた。時刻は正午、ちょうど昼休みに入ったところだ。泉川久守は科の医師たちと食事に出ようとしていた矢先だっ...

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