第82章 バレた

サルは恐怖のあまり、魂が抜けたようになっていた。葉山天に「逃げろ」と言われたと勘違いしたのだ。所詮、サルはただのチンピラに過ぎない。かつてドスを握り、歯を食いしばって一人切りつけただけで名を売ったが、それ以来、血を見るだけで反吐が出る始末だ。今、一人で誰かを切りに行けと言われても、そんな度胸などありはしない。おまけに、この小柄で色香漂う女の下腹部は鮮血で濡れそぼっており、その光景はあまりに凄惨だった。

葉山天は昏倒した女の体の数箇所にあるツボを突き、一時的に止血を施すと、顔を上げて言った。

「『桜華苑』へ向かえ」

その名を聞いたサルは、思わず葉山天の顔をまじまじと見つめた。「桜華苑」と...

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