第5章

直樹視点

今日の病院はどこかおかしかった。不気味なほど静かで、まるで嵐の前の静けさだ。

いつものように佳奈が颯爽と現れるんじゃないかと、心のどこかで期待していた。大げさにまつげを揺らし、頼んでもいないランチを置いていき、くだらない言い訳をつけて俺のオフィスに居座る、あのルーティンだ。だが、3時になっても彼女の気配はなかった。

「安藤先生?」

看護師の恵美が顔を覗かせた。

「4時の患者様がいらっしゃいました」

「ありがとう」

俺はもう一度スマホを確認した。佳奈からの連絡は、なし。

『俺は一体、何のために見てるんだ?』

今朝の修羅場が、悪夢のループのように頭の中で再生...

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