第5章

山崎絵麻の視点

朝の光が窓から差し込んでいる。オープンキッチンはベーコンの香りで満たされ、私はコンロの前に立ち、フライパンの上のベーコンをひっくり返していた。拓也はダークグレーのTシャツと黒のスウェットパンツ姿でダイニングテーブルに座り、タブレットに目を落として金融ニュースをスクロールしている。

週末のカジュアルな格好が彼にはよく似合う。似合いすぎている。

「拓也、金曜日はお休みじゃないの?」

彼の指がスクロールの途中で止まる。顔は上げない。「ああ。第3四半期業績が出た後だから、取締役会から休めって言われたんだ」

「数日間、青葉台の別荘に行かない?」

タブレットが彼の手か...

ログインして続きを読む